アミロイドーシスについて

アミロイドーシスの概略

I.どんな病気ですか

アミロイドーシスは線維状蛋白であるアミロイド細線維が細胞外へ沈着する疾患の総称です。臨床的には複数の内臓器官や末梢神経などが障害される全身性アミロイドーシスと一器官または臓器の局所にアミロイド沈着が起こる限局性アミロイドーシスに大別されます。生命予後に大きな影響を与えるのは前者の全身性アミロイドーシスであり、限局性アミロイドーシスの大部分は良性な疾患です。

但し、脳アミロイドーシスはアルツハイマー病に代表される認知症を引き起こすため、厄介な疾患です。

II. どんな病型があり、またどんな症状を出すのですか

アミロイドーシスはアミロイド前駆蛋白の生化学的性状を加味して亜型分類されております。全身性アミロイドーシスでは血清中にアミロイドの基となる蛋白(前駆蛋白)が存在し、何らかの機序で可溶性の前駆蛋白が不溶性のアミロイド細線維として心臓、腎臓、消化管、末梢神経等の身体の重要な組織へ沈着します。

その結果、これらの臓器・組織の機能障害が起こり、患者さんは多彩な全身症状を呈します。主な症状は不整脈、心不全、蛋白尿、腎不全、食欲不振、頑固な便秘と下痢の繰り返し、手足のしびれと麻痺です。頻度の高い全身性アミロイドーシスとしては i)骨髄の形質細胞異常症を基盤に発生する原発性AL、ii)関節リウマチ等の慢性炎症に続発する反応性AA、iii)10年以上の長期透析患者に発生するAß2M、iV)遺伝子変異が原因の遺伝性ATTR、V)加齢現象に付随する老人性ATTR、の5病型があります。
本邦で最も頻度が高いのは原発性全身性ALアミロイドーシスであり、年間発生率は約3〜5/100万人です。遺伝性ATTRアミロイドーシスは家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)とも呼ばれており、多発神経炎と自律神経不全を主症状とします。

わが国では熊本県と長野県にFAP患者さんの集積地がありますが、孤発家系出身の患者さんも全国各地から多数報告されております。前者に属する患者さんは20~40歳代の若年発症ですが、後者群の患者さんは60歳以降の高齢発症であり、特に男性が8割近くを占めるという特徴があります。

わが国では高齢男性の多発ニューロパチーの原因としてFAPを積極的に考慮する必要があります。老人性全身性ATTRアミロイドーシスは旧名が“老人性心アミロイドーシス”であり、欧米では古くから高齢者の難治性心不全の原因として注目されております。近年、診断法の進歩により本邦においても一定数の老人性全身性ATTRアミロイドーシス患者さんが臨床診断されており、今後高齢者人口の急増に伴いその患者数は増加すると予測されます。

III.診断を確定する方法は

アミロイドーシスの確定診断には組織におけるアミロイド沈着を病理組織学的(顕微鏡観察にて)に証明する必要があります。通常は身体のどこかの部位から生検組織を採取して、コンゴーレッドという色素で染色します。アミロイド沈着病変はコンゴーレッド色素で桃赤色に染まり、また偏光顕微鏡下で観察すると黄緑色の独特の偏光を呈します。

組織を採取しやすい生検部位として皮膚、口唇、胃十二指腸粘膜、直腸粘膜等があげられます。この段階までは一般の病院で行えますが、生検組織を用いてアミロイド蛋白を免疫化学的に同定して、アミロイドーシスの病型診断を行うためには標本を専門的検索が可能な施設へ送る必要があります。

また遺伝性アミロイドーシスが疑われる場合には遺伝子解析が不可欠であり、この場合も患者さんのDNAを専門施設へ送らなくてはなりません。

IV.治療

全身性アミロイドーシスの治療は病型により異なりますが、その原則は体内におけるアミロイド前駆蛋白の産生を停止することです。具体的には原発性AL型では基礎疾患である形質細胞異常症を化学療法で治療します。複数の薬剤の組み合わせが有効ですが、自己末梢血幹細胞移植を併用したメルファラン大量静注療法が最も効果がある化学療法です。反応性AA型では原疾患の徹底した治療が優先されます。近年は関節リウマチの治療成績が向上しており、反応性AAアミロイドーシスの発生頻度が減少しております。透析関連Aβ2型では血清中のβ2ミクログロブリン濃度の低下を目指した透析膜の改良が行われております。また腎移植は非常に有効です。

FAPにおいてはアミロイド前駆蛋白である変異(アミノ酸が一個正常とは異なる)トランスサイレチン(TTR)の大部分が肝臓で産生されているため、肝移植が治療の原則となっております。しかし高齢発症者は医学的理由により肝移植を受けることができません。最近、TTR分子がアミロイドに変換されることを阻止する薬剤(ジフルニサル)の投与が試みられており、ある程度の治療効果が発揮されております。また近い将来、タファミディスという新薬の登場が計画されております。両薬剤はアミロイド前駆蛋白が正常型TTRであるところの老人性全身性アミロイドーシスにおいても治療効果を発揮することが期待されております。

アミロイドーシス研究における日本人の貢献

年月

研究内容

施設、代表研究者

1968 熊本県荒尾市にFAP集積地を発見。 九州大学神経内科 荒木淑郎
1973 長野県上水内郡小川村周辺にFAP集積地を発見。 東京女子医科大学内科 鬼頭昭三
1981 FAPのアミロイドはプレアルブミン由来である。 宮崎医科大学第三内科 俵哲
1984 FAPの遺伝子診断法確立。 九州大学遺伝研 榊佳之
1985 透析アミロイドーシスのアミロイドはベーター2ミクログロブリン由来である。 新潟大学第二内科 下条文武
1986 老化促進マウスからアポAII由来アミロイドを分離・精製。 京都大学胸部疾患研 樋口京一
1987 FAPモデルとなるトランスジェニックマウスの作成。 熊本大学遺伝研 山村研一
1993 FAPの根治療法として生体肝移植が開始される。 信州大学第三内科 池田修一
1998 動物のアミロイドーシスは個体間で伝播する現象を発見。 信州大学加齢生物医学 樋口京一
2002 角膜アミロイドーシスのアミロイドはラクトフェリン由来である。 熊本大学臨床検査医学 安東由喜雄
2003 原発性全身性ALアミロイドーシスの根治療法として自己末梢血幹細胞移植を併用したメルファラン大量療法が開始される。 信州大学第三内科 松田正之
2004 FAPの薬物療法としてジフルニサルの投与が開始される。 信州大学第三内科 関島良樹
 
 

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